11月23日


アッシャ−S520をトルクマネ−ジメントシステムで調整

今回のエンゼルポケットニュ−スは、前回9月20日にお送りした続きで、アッシャ−S520をトルクマネ−ジメントシステムで調整します。
アッシャ−S520も11月下旬第3次ロッドが入荷予定です。現在ご注文いただいている皆様は大変ご迷惑をおかけしました。
11月23日時点で、港に到着しています。通簡にどのくらいかかるかわかりませんが、早ければ11月末
12月初旬には入荷しそうです。TMSも購入して調整してみてください。
TMSの小型バージョンの発売しました。SMP-02 TMS-LTDK-N6セット \22,100 です。小さいほうのトルクドライバ−が1本付いたタイプです。A&Vヴィレッジの11月号の読者だよりに欲しいバ−ジョンのセットで値段を安くという意見があったのでシンプソンの渡辺さんと相談して決めました。
http://www.avvillage.com/localmailorder/main.html
のオーディアクセサリー4Pに掲載しています。

TMSでS-520を調整する-1
トルク・マネージメント・システムによるスピーカー調整第三回はいよいよUSHERのS-520です。
驚くべきコストパフォーマンスのこの機種のトルク調整は個人的にも非常に興味のあるものでした。今回は数種類のセッティングとさらに複数の環境下でTMSの適合性を提示できればと考えています。なお今回のレポートは諸処の事情により9月の頭に始まり、つい先日終了という足かけ三ヶ月の長期調整となりました。季節をまたぐ調整は実に多くの発見に満ちたものとなりました。それでは長めのレポートじっくりとおつきあい下さい。

現状を聴いてみよう
まずはお約束の現在の音を聞いてみましょう。現在と言っても今は昔、ウッドキャビネットのS-520との出会いは9月初旬、世間はまだ夏のことでした。噂に違わず非常に説得力のある音を出してきています。特に音場感は傑出していて、ボディサイズを上回る縦横の広さと各音源間の空気を活性化するような不思議な表現力があります。感心しつつも調整者の感性に立ち戻って少々意地の悪い耳で聞いてみると中央の座りが甘く、楽器の定位に滲みが出ています。また帯域により若干の暴れが感じられる部分もあり、おそらく左右の各ユニットに1割程度はトルク差が生じていると思われます。それでは早速測定してみましょう。

実測!
トルクドライバーに所定のビットをセットします。今回使用するのは六角穴3mmと+のNo.2の二種類です。基礎トルク→調査トルクの順にマネージメントソフトウェアへ入力して行きます。*USHER各シリーズはフレーム表面の塗装皮膜が柔らかく摩擦抵抗が高いため初回調整は"木ネジ通常"モードで行います。今回はスピーカー片側11本、この程度なら計測は簡単です。

解析データから見えたもの
その結果得られたのがこのデータシートです。例によって聞こえていたものは数値として現れました。各chの平均値でツイーターユニットはLchが大きく、ウーファーユニットではRchが大きい状態となっていました。当然中央軸上の整合性は希薄となり、定位の乱れや帯域にピークが生じます。同一ユニット内での格差は予想よりも多めでしたが出音にそれほど感じさせないのはユニットの基本性能の高さだと思います。また流石におろし立ての新品、このクラスにしてはしっかりとした強めの値が出ていました。

調整!
それでは数値を設定しましょう。この時は前々回CP-8871の調整をしっかり見ていた今井君が既に調整を会得されていてブラックタイプのS-520の全てのネジをを65cN・mで統一し非常に良く鳴らしていた事もあり、データシートのツイーターとターミナルのLR平均値を参考に65Allから設定して見ました。ちなみに520のブラックタイプとウッドタイプはかなりキャラが違いキャビネット表面仕上げの物性の違いが明確に音に出ています。比較的柔らかめの制振性のある塗料で仕上げられているブラックタイプは音を直線的に前に出してくるタイプ。天然木化粧版仕上げのウッドタイプは比較的放射状に音を撒くタイプです。おっと話がそれてしまいました。この日は比較的ギャラリーが多く(店二人客三人)皆さん興味津々で出音を待ちます。それでは65Allで試聴です。

試聴&調整
音が出た瞬間に全員の顔が激変です。解像度と整合性の高さは調整前と後では全く比較になりません。初体験のお客さんは一様に驚き、経験済みのお店のスタッフはほくそ笑みます。TMSの実力を知るには何と言っても実体験が一番。「百聞は一聴に如かず」なのです。ただしこの値には惜しい部分があります。65AllはウッドキャビネットのS-520にとって音楽的限界値にかなり近いものと思われ、出音はある種禁欲的です。スピーカーはソースを極めて忠実にトレースしているのですが、そこに遊びや余裕といったものが感じられません。それでは値を5ずつ下げて聞いて行きましょう。ここでまた全員の顔が激変します。値を下げるに従って緊張から開放へと向かう一つのリニアな変化の方向性と段階的かつ周回的に帯域バランスや速度感が複雑に変化して行くもう一つの方向性が相まって「一つとして同じ音風景はない」といことを体感できたからです。3段階下げて50Allで最適値に出会えました。解像度と整合性の高さはそのままに開放感に溢れバランス良くハイスピード。なによりも520の魅力のキーワードである「活性」が最大限に表現されています。念のためもう一段階下げた45Allを聞き、再度50Allの優秀性を確認。この場に立ち会った全員が納得の表情を浮かべていました。

さらなる調整の約束
時間の関係でこの日の調整はここまでとなりましたが個人的には更なる調整の可能性を感じていました。次回はユニットを個別に調整するつもりです。調整後居合わせたお客さんより「何でこんなに変わるのですか?」との質問。「ドラムという楽器を思い浮かべて下さい。皮の張り具合で音が変わりますよね。スピーカーも全く同じなんです。」

次回予告
あれだけ素晴らしかった50Allに異変が!・・・乞うご期待
次回は週明けに報告です。