10月17日

オーディオアクセサリーの謎

エンゼルポケットでは、オーディオアクセサリーの様々な実験を試みてきましたが、なぜ、インシュレーターやケーブルで音が変わるのか良く分からない部分がたくさんありました。しかし、「多分こうなのではないか。」という確信が少しずつ得られてきたので、自分自身が考えられるオーディオアクセサリーの謎を推定で、解説していきたいと思います。

第1回 インシュレーター
インシュレーターで音が変わることは、もはや常識となっています。またオーディオ製品自体にもメーカー製のインシュレーターが付いている物が多くあります。しかし、オーディオにこだわりを持っている人は、アクセサリーメーカーが独自に開発したインシュレーターを自分の機器の下の置いて、音の調整を試みている人がたくさんいます。またインシュレーターの種類により音が違うという事も事実と考えています。

オーディオ機器で効果の大きい製品は?
自分自身の経験によると、インシュレーターで最も効果の大きいオーディオ製品を順番にならべると
1スピーカー
2CDプレーヤ
3アンプ
というふうに考えています。この考えに異論がある方もいるかもしれませんが、今までのいろいろな経験から推測するとこうなってしまいます。
では、なぜこの順番になるのでしょうか。ずっと以前から考えていました。そして、一番関係しているのが、振動という点に着目しました。しかもその振動は、スピーカーが自ら出す音声の振動がオーディオ機器に跳ね返って来る事が、一番の理由と考えました。これを、「オーディオ的空気振動フィードバック」と勝手に名前を付けました。そこで、ある実験を試みました。
CDプレーヤーにインシュレーターを置き、スピーカーで再生した場合とヘッドフォンで再生した場合には、どちらに音質の変化が現れるかという事です。結果は、どのようなインシュレーターを使用しても、スピーカーで音楽を再生した場合の方が音質に多くの影響が現れるという事でした。音量を大きくすれば大きくするほど、その違いは顕著に現れます。逆にヘッドフォンでは、音質の違いは余り確認できませんでした。(全く同じというものでもないのですが。)

どうしてスピーカーが一番インシュレーターの影響を受けやすいのか。
なぜスピーカーにインシュレーターが一番効果が大きいのかと考えると、「スピーカーは楽器と同じように、自ら振動して音を出すから。」ということ思っています。

スピーカーとインシュレーターの相関関係
物体には必ず固有の周波数というものを持っています。金属、木、プラステック、ゴム、等そして、スピーカーの下にこれらの物を置くとコロコロと音が変わります。それは、自ら再生する音が、スピーカー自体を振動させ、インシュレーターの持つ固有振動がスピーカーに共鳴するからと考えられます。私は以前、スピーカーからでた振動(音)は、床を伝わって振動が戻ってくるから、インシュレーターで音が変わると思っていました。だから、下からの振動を完全に無影響にしてしまえば良いのではないかと思っていました。しかし、空気自体の振動は、物体の大きい物の方がはるかに影響があることが解りました。以前ギターの練習をしようと、オーディオを再生しながらギターを持っていると、演奏はしていないのに、スピーカーで音を再生しているときは、ギターの底板がものすごい振動していることがわかりました。「ギターがこれだけ振動しているのに、オーディオ装置自体が振動しないはずがない。」と考えるようになりました。スピーカー自体が振動しても、その下のインシュレーターの下で、摩擦が起こり振動がのりますので、全く同じ事です。

自ら振動して音を出す物は、ちょっとした行為で、音が激変する。
以前から、スピーカーは楽器のような物と考えていました。なぜならば、自ら振動して音を出すからです。同じく楽器でもちょっとした事で音が変わります。弦楽器ならば、「弦の調整」、吹奏楽器なら「リードの調整」です。以前ベーシストの方に、ベースを地面に直接置く場合と、間に板を入れてベースを弾いてもらう実験をしましたが、ものすごい音の変わり方をしました。ボーカルの人にも、同じ実験をして頂きました。ボーカルもベース同様音は変わります。しかし、その変化はベースの音ほどではありませんでした。おそらく理由は「人間は振動に対する影響が少ないから。」と思っています。人間の体は柔構造の吸音材だからです。しかし、話をしている時に、自分の喉を手で押さえれば、音は変わるはずです。それは、「弦の調整」のような物でしょう。

CDプレーヤーとインシュレーターの関係

その次に考えらる謎が、CDプレーヤにインシュレーターがなぜあれほど効果があるのかという事でした。エンゼルポケットにあるCDプレーヤーは、どのようなインシュレーターを使用しても、ものすごく音が変わります。しかし、PCトランスポーターDPAT01では、インシュレーターは余り効き目がありません。「全く違わないわけではないのですが。」CDプレーヤーに比べると、その音の違いは段違いに少ないです。これも「CDプレーヤー自体にオーディオ的空気振動フィードバックがかかるからでは」と思っています。しかし、アンプよりもCDプレーヤーの方が音の変化が大きいのはなぜかと考えます。そして、でた結論は「CDプレーヤーは電気を使ってメカを動かしているから」と推測しました。

CDプレーヤー 音の因果関係は「サーボ」にあり
CDプレーヤーは、サーボによって制御されている機械です。このサーボという物は、データの読取に対して、かなり微妙な関係で成り立っているので、振動対策は非常に効果が大きいと考えています。では、DPATではというと、先に読んでしまった分、サーボの影響は受けません。しかし、ハードディスクにも振動があります。DPATで採用されているハードディスクは高価なもので、振動や騒音が少なく、また外部的要因も受けにくいよう、振動対策をしています。しかし、それでもメモリー出力の方が、圧倒的に音質が良いと考えています。「バイナリー一致したら音は変わらない。」という人もいますが、バイナリー一致は再生条件としては、最低の条件です。逆に言えば、CD再生によってバイナリー一致しないというのは、「ほとんど詐欺に近い。」といえるのではないでしょうか。DPATでは、CDを回転させながら音楽再生できます。またハードディスクからも音楽再生でき、メモリーからも音楽再生できます。しかし、全てがバイナリー一致しています。結局バイナリー一致しても音は変わります。そして、DPATの場合は同時再生→HDD再生→メモリー再生というように、振動を排除していけば、排除していくほど、音が良くなっていきます。これと、同じ事がCDプレーヤーにも言えるでしょう。このようにメカニカルな部分を受け持つ、CDプレーヤーはインシュレーターの影響を非常に受けやすい構造になっているのではないかと考えています。
以前お客様訪問で、Wadia製トランスポーターをエアーで完全に浮かせていた方がいました。その状態のものと、DPAT01はコンクリートに直接置いてありました。どちらが、良い音かお客様に判断していただきましたが、例えCDトランスポーターをエアーで浮かした状態でも、DPATの方が音が良いという結論を頂きました。その時お客様が「エアーで浮かしているのだから、振動的影響は受けないはず。」とおっしゃっていたのですが、「スピーカーと同じ部屋に、オーディオ機器を設置していれば、振動からは逃れる事はできません。」という事で納得して頂ました。空気は見えないから、気づきにくいのです。もし、インシュレーターで、音が変わらないというのであれば、「よほど小さい音で再生するか、ヘッドフォンで聴くか、スピーカー以外のオーディオ装置を部屋の外に置くようにするしか方法は無い。」と考えています。しかし、スピーカー以外の再生装置を部屋の外に置いている人は、まだ見たことがありません。そう考えると、オーディオ機器にアクセサリーは必需品と考えています。

アナログプレーヤーとCDプレーヤー

アナログプレーヤーとCDプレーヤーではインシュレーターは、どちらが効き目があるか実験しました。
これも、一概には言えないのですが、CDプレーヤーの方が影響が大きいのではと思っています。しかし、アナログプレーヤーは、ターンテーブルシートを交換したり、スタビライザー取り付けたり、カートリッジを交換すると、ものすごく音が変わります。それでも、インシュレーターでの音の違いはCDプレーヤーが大きいと思っています。
ではそれは何故かと考えると、あくまでも推測ですが、回転数の違いと言う事が1つ上げられると思っています。 CDは回転速度をコントロールして線速度一定CLV(Constant Linear Velocity)という方式で再生されています。CDの円周は外側ほど長くなるため、ディスクを同じ速度で回せば、外側のデータを読む方が、内側のデータを読むよりも多くのデータが流れ込んできます。しかし、音楽CDなどの場合は常に同じ速度でデータを読み出す必要があるため、外側ほど低い回転数で、内側ほど高い回転数でCDを回転させ、ヘッドが記録面をなぞる速度(線速度)を一定に保っています。つまりCDプレーヤーの蓋を外して上から覗き込めば、回転速度は常に変化してると言えます。それに比べアナログプレーヤーは回転数を一定に保つ制御方式、CAV(Constant Angular Velocity:角速度一定)で制御しています。また、プログラムやデータを読み書きすることの多いコンピュータのディスクドライブなどはCAVが使われています。速度一定でないものは、常に動的作用に無理がかかり、「ちょっとした振動にはもろいのでは」というのが私の結論です。CLVを正確に保つ為には、サーボ、クロックの安定が絶対に必要であり、それを邪魔するものが「外部的振動」ということになる可能性は大いにあると思っています。

質の良いインシュレーターはCDプレーヤーのメカ部分に効果あり。
質の良いインシュレーターといっても組合せによって難しい事です。
「個人的な音の好み」もあるでしょうから、一概には言えません。しかし、逆に考えるとインシュレーターは音を演出するアクセサリーとしては、絶対必需品と言えるでしょう。しかし、それと同等に効果のある物は、CDプレーヤー内部の制振対策だと思います。

アンプとインシュレーターの関係
アンプに対してのインシュレーター効果は「他の製品よりも影響は少ない。」と考えています。しかし、「どこに適当に置いても良い。」というものでもないでしょう。A級モノアンプ等ボリューム無しのアンプは影響が少ないのですが、「真空管アンプやAVアンプは非常に影響を受ける。」と考えています。「真空管アンプは、構造上真空管自体が振動によって音色が変わる、そして空気中にむき出しで場合が多い事。AVアンプは、構造が複雑で振動によるジッターが発生しやすい構造なっているのでは?」と考えています。しかし、自ら振動する構造になっていないために、微妙なニュアンスの変化ということになるのではないかと思っています。でも大幅に音が変わるよりも、微妙なニュアンスの違いは仕上げとしてのオーディオでは非常に大切です。おろそかにする事は出来ないでしょう。

まとめ
インシュレーターは、非常に難しいもので、何が良いのかなかなか見当がつかない製品です。しかし、昔から独特な言い回しがあります。例えば「鉛を下に置くと鉛臭い音がする。」「ゴムはゴム臭い。」とか、確かに「怪しさ100万倍」ですが、あながち嘘ではないのではないかと思っています。

1スピーカーに対しての理想的インシュレーターは
○木のエンクロジャーの場合は、木製が良い
○ピアノ、バイオリン、チェロ、のような木を使った楽器の場合は木のインシュレーターが良い
○金管楽器は相対的に、銅、真鍮系のインシュレーターが適している

2CDプレーヤーに対しての理想的なインシュレーターは
○「何も足さない、何も引かない。」を目指すならば、振動の縁を完全切るもの(マグナライザー、オーリアス系)
○「多少響きを乗せたいならば。」金属系インシュレーター

という感じになります。音は自分で作っていく物です。それには長年の経験と感がとても大事です。「なぜなのか。」という事と「こうしたら、こうなった。」という事のバランスがとても重要な気がします。オーディオは理論50%、実践50%ぐらいが、一番バランスが良いと思っています。あとは、実践あるのみです。