12月26日

本日のテーマは、オペアンプについてです。
A&Vヴィレッジライターの西出晃さんがじっくりと書いてくれました。
「オペアンプ」なんて言葉初めて聞いたという方のために、かなりやさしい文章で書いています。ぜひじっくり読んでみてください。

その前にエンゼルポケットの休暇についてです。
2005年度は12月31日まで営業いたします。
休業日2006年1月1日(日)〜2006年1月3日(火)
1月4日(水)以降は通常どおりの営業をさせていただきます。
今後ともよろしくお願い申し上げます

佐川急便からのお知らせ
年内の配達ご希望の方 締め切りは下記日図となります。
28日 北海道、九州、
29日 東北・中国・四国
30日 関西・北陸・信越・関東

エンゼルポケットニュースはこれで今年最後となります。ご愛読していただいた皆様大変ありがとうございました。エンゼルポケットニュース来年の始まりは恒例のベストランキングです。まだ若干時間が残っていますので、プレゼント応募もよろしくお願いします。来年又お会いしましょう。

Cobalt X-1000 series
Cobalt X-1000 lead OPerational AMPlifier for Audio.
コバルト X-1000端子採用
オーディオ用 オペアンプ

オペアンプについて
 まだ発売前ですが、多くの方からご質問をいただいております。また改造に関しても「OP AMP交換以外にも改造手法って有るの?」と言った質問も多いです。これらを理解するためには少し基礎知識が必要です。
 ここで少し回路設計?回路と音質?回路?ニュアンスが難しいのですが、これらに関係する説明をしましょう。
 今回は開発で忙しい中ざっと書きましたので、もしかすると細かなニュアンスの違いや、実際には少し意味合いが違うというような部分も文中にあるかもしれませんが、大筋は理解していただけると思いますのであらかじめご了承願います。

 さて、オーディオ回路に限らず電気回路、特に増幅回路は真空管が開発されてからずっと使われています。回路方式はいろいろありますが、トランスを除く増幅素子を使うものの多くは、「入力信号に比例した形で出力信号を変化させる」というものです。
 たとえば、入力に1が入ると出力は2と言うような場合2倍の増幅器です。原理は、電流増幅素子や電圧増幅素子など有りますが、簡単に言うと出力を入力側でコントロールしていると言う形になります。たとえで言いますと、運動会のシーズンですから玉入れの玉を想像してください。玉はかごの中にあります。かけ声をかけたら1個ずつ取り出す。その玉を電流と考えてください。かけ声は入力、カウントしながら玉を投げたら出力です。この場合かけ声1に対して玉は1ですから1倍の増幅器と考えます。かけ声をかけたら玉を2個投げるとすると、2倍の増幅器になります。かけ声と玉???物質が違うよ!と言われるかもしれませんが、実は実際のアンプでも入力は何でも良いのです。光でもいいですし、パルスのカウント数でも良いです。
 要するに入力と比例した出力が得られるということが有れば「入力の物質を変えずに何かのパワーで 大きくする」という必要はないわけです。子供の動物が年齢とともに成長して大きくなっていくような個体自体は変えずに大きくなると言う必要はなく、言い換えれば「増幅しろ」というサインがあったら大きな別の個体を用意してもかまわないと言うことです。
 ただ電気信号でアナログの場合には1V入ったら2Vと言うように物質は変わりません。電気と電気です。ただ変わってもその取り決めさえしっかりしておけば増幅はできると言うことなのです。
 これは結構難しく、私も解るまでに大分時間が必要でした。(子供の頃の話です)しかしこれが解ってしまうと増幅器はいろいろなバリエーションでも応用が利きます。
 アンプの増幅は一般的にリニア(入力信号に出力が比例)しないと多くの場合役に立ちませんので(対数増幅や1/nにするような増幅もある)これを考えていきますが、言葉は簡単ですが、実際には非常に難しいのです。

 また、デジタルも結局は今の玉入れの説明でアナログをデジタルに変える際に きちんと取り決めをして、その通りにまた玉を出す。つまり玉を一つ取り出したら かけ声を1回かける。このかけ声を保存しておくと保存されたかけ声で球を投げたときと入出力は同一になります。
 さて、増幅装置は難しいと言いましたが、入力に対しての出力をいかにリニアに(直線的に)増幅するか!が問題となります。2倍の増幅器でしたら1の入力が入ったら2を、2が入ったら4をというような形です。また周波数側も20Hzの時も 20KHzの時も同じように入力の2倍が出なければいけません。オーディオでは 20〜20KHzと言っていますが、少なくともこの間ではリニアに増幅しないといけないわけです。
 あと結構忘れられている問題があります。位相です。20Hzと20KHzを同時に入力した場合、出力には同時に20Hzと20KHzが2倍になって現れないといけません。図の例では10Hzと100Hzと解りやすく書いていますが同じことです。
 さて本当に現在の増幅器はこうなっているのでしょうか?実はNOです。つまり 完璧な増幅器ではないのです。だからいろいろな問題が生じます。最近では良心的と思えるカタログ記載があったのですが、「何オーム負荷で何ワット出るか」という物があります。従来は8オームで何ワット、4オームで何ワット、というものですが、実はこの性能表には「インピーダンスが変わってもリニアに増幅できるか」という項目が抜けていたのです。もっと言うと出力はさほど要りません。20Wもあればかなり大きな音がします。まあスピーカーの能率が良い場合ですが・・・しかし低音を出そうと、質量を重くしたスピーカーは動作が遅く私は好みません。軽いコーンで高速なものが生の音に近く好きです。
 さてスピーカーのインイーダンスは変化します。このあたりは問題を複雑にして今まで多くの議論がありましたが、そもそもアンプはどうなのか?についてメーカーの見解は無かったのです。しかし技術の進歩で少しずつ良い物が出来上がり 公開されつつあるのは喜ばしいことです。
 しかし、こういう項目が登場する=ほとんどのアンプは???と考えなくてはいけません。また、規格外の部分ではどうなのか?も考えないといけません。OJI Specialでもこのあたりの問題を多面的な部分から攻めてきました。
 あと増幅器はこれらの性能だけでなくSN(信号とノイズ)がどのくらい多く取れているか、混変調といって入力と出力が異なったり、まだまだ多くの様々な問題が山積みなのです。
 さて これを一つづつ説明していると技術講座になりますし、とても数枚のページでは足りません。ここで理解していただきたいのは説明してきたとおり、メーカーの特性表だけでは 機器の性能のほんの一部を表示しているだけにすぎないのです。それでこういう部分を良く理解していただけるように、感覚だけ感じていただければと思い、そう言う部分を説明します。
 これらの多くの問題は、実はアンプ回路だけでは決まらないのです。その一つに 配線があります。配線方法(基板のパターンなど)が悪いと、ノイズを拾ってSNの悪化やクロストークや混変調号などが起き、歪みの原因となります。また、発振などの問題も起こりやすくなります。
 電源はどうでしょうか? 電源の供給が追いつかないと、当然リニアにはなりません。追いつかない分、非直線になるのです。つまり歪みになります。多くの人は コンデンサーを大きくすればいいとか、回路を工夫して高速化すればいいなど考えますが、実はコンデンサーは周波数特性を持っていて完璧な物は存在しません。つまり20Hzと20KHzで同じ特性を示さないのです。どうしても特性に差が出ますので前述の理想的な増幅器にはなりません。
 では現在のアンプは駄目なのか?と言うことになりますが、そんなことはなく 皆様ご存じのように実用には問題がないのです。人間の感覚にはばらつきがありますし、曖昧さが有ります。たとえ0.1%狂っていてもその差を感じなければ良いのです。しかし感じる人もいるでしょう。そうなると、その人にとっては不具合になります。位相についても同じです。多少狂っていても感じない人もいれば感じる人もいます。そういう様々な差が、オーディオの難しさになっているのです。
 さらに問題を複雑にしているのは余裕度です。多くの場合、余裕がないときちんと動作しません。車で言うと5t車に5t乗せて走るより、10t車に5t乗せた方が、いざというときのパワーもありますし、乗っていて楽ですよね。まあ大きさが同じという条件付きですが・・・
 アンプでもこういう部分があり、20〜20KHz再生すればいいと言って、こういう増幅器を作ると、実は20KHzで位相が狂っていたり、出力が直線でなくなったりするのです。簡単に言うと余裕がないのです。20Kを完璧にし、さらに人が解らないと言うようなレベルにするには、遙か上の方まで増幅できないといけない と言う考え方にもなりますし、1W必要であっても実はもっと出力が無いと駄目 と言う考えにもなります。20KHzを超えた部分や数十キロヘルツにフィルタが入っているようだと問題です。フィルタはカットオフ周波数のかなり下の方から 特性はおかしくなります。
 今まで 多くのメーカーさんは、計測できる部分のこういうことを宣伝文句に使ってきました。歪み、周波数特性、スルーレート、SN etc。計測もできますし証明もしやすいですし、消費者を納得させるだけの根拠になります。ではこれで十分なのでしょうか?じつは 不十分です。簡単にいうと10W出せるから1WはOKという単純な物では無いからです。仮に出力は10W出るが1Wの歪みが10%もあったら、これはオーディオアンプとしては使えないでしょう。つまり一つのデータだけでなく沢山のデータが絡み合っています。さらにメーカーさんの測定に登場してこない様々な特性が実はあるのです。

複雑になってきたのでまとめましょう。
1,アンプは 個別の特性だけではその善し悪しは決まらない
2,アンプは 回路だけでなく、パターンや、パーツ、
  使い方(接続される電源や機器)などで大きく特性を変える
3,十分な特性を得るためには余裕が大切であるが、余裕だけでは、駄目
4,人によって感じ方が様々で アンプの特性だけでは音質は決まらない
まだまだ 有ると思いますが こんな感じになります。

 では話を主題に戻し、コバルトX-1000や改造の話にしましょう。今までの話を頭に思い浮かべながら読むときっと内容が解ると思います。
 OJI Specialでは改造をかなり手がけています。それは改造することによって回路の特性が大きく変わるからです。これは説明したとおりです。回路は同じでもパターンを変えれば特性が変わります。コンデンサーや抵抗を変えても特性が変わります。ICを変えても特性は変わります。つまり既製品であっても、改造によってまだまだ良くなる要素があるのです。だから改造します。新しく作ったらと言うこともありますが、価格的な部分から言ったら量産品には絶対にかないません。同じ金額であれば量産品の方がよほど良い物が作れます。もちろんこれでどうだ!という物もOJI Specialでは用意していますが、良いものを作ればどうしても価格は高くなりますし、特性の頭打ち部分がハイエンドですから、費用対特性のいわゆるコストパフォーマンスは悪くなります。リーズナブルな価格でできるだけ高性能を、ということから言ったら改造は非常に有効な手段なのです。
 欠点は、回路設計が悪い場合や基板の設計が悪い場合、改造でもそれほど性能は向上しませんし、IC自体の特性限界があるとそれ以上には性能は向上しません。たとえば16ビット分解能しかないデジタルICで24ビット性能は出せません。ごまかすことはできますが・・・・
 ただし、実際の出音が24ビットが16ビットに比べ優れているかというとそうではありません。理由は、本当に24ビット分解能が得られているか、非直線性は無いのか、他の歪みはないのか?回路は?まだまだ沢山不明な点がありますが、単純な言葉だけでは音質は決まりません。
 左は直線性が悪い物、右は完璧な理想型です。入力1有ったときに2が出ています。つまりどちらも同じ性能にみえますが、実際には左の図は非直線です。デジタルでは ビット間の非直線歪みは、何ビットという値では表記できません。また単純に16ビットと言っても16ビットの精度が取れているかは別の話なのです。
 この図で出力2までの間を4ビット分割したとしましょう。つまり1/16に分割されます。左では確かに右肩上がりではありますが、出力は直線的でないので歪みだらけになると言うわけです。問題なのは、これが性能表に直接現れないことです。あとアナログでも同じで、計測器の精度以下は表記できないのです。ですから 性能表と実際は変わるのです。何ビット、何パーセントなどあまり意味を持ちません。
 というわけですが、そういう性能表に最初から現れていない部分をアナログ的に高度にチューニングしているのが改造で、それが有効と言うことがおわかりになったと思います。
 では コバルトX-1000は何に有効なのでしょうか?これは前述の説明で言う 回路パターンに関係があります。たとえば抵抗値だけを考えます。回路パターンの引き方が悪く、長いパターンだったとしましょう。これでは銅線の(パターンの)抵抗値が短い場合に比べ大きくなって高周波領域にはかなりの影響が出ます。低周波域でもノイズが乗ったりSNも悪くなるかもしれません。これと同じ様にコネクタなどの接触が悪いと抵抗値が増えます。そうなると悪いパターンを使っているのと同じ様なことになるのです。
 だから接触を安定させたりすることが重要になるわけです。オペアンプでは8箇所も接点があります。本当は、ハンダ付けしてしまえば良いのでしょうけれど、これでは交換するという楽しみができません。ハンダ付けをしてしまうと剥がしてまたハンダ付けをするという作業になり、逆にパターンや基板を痛めることにもなりますし、直ぐに比較ができないので適正な評価ができないかもしれません。
 同じようにアンプとCDプレイヤーを結んだりするRCAケーブルの接点も同じなのです。ケーブル無しの直結ハンダ付けが特性的には一番良いに決まっていますが、これでは機器を交換できませんし、オーディオという趣味から言ったらあまりよい物ではありません。だから良い接点やケーブルが必要なのです。
 図では機器AとBをケーブルで接続していますが、抵抗だけを考えた場合(本当は コンデンサーやコイルなどの分布定数回路になる)接点やケーブルの抵抗が入った形になります。理想から言うと これらの抵抗はない方が良いですね。
 だから接点を安定させ、低抵抗にするために金メッキなどの手法をとったり、プラグを良いものにしてきたのですが、接点を変えると音が良くなったり変わるのは まだまだ性能は理想的でないわけです。
 同じようにオペアンプも接点があります。それも重要なアンプの入力など含め 8個もあるのです。難しい言葉で説明することになってしまいますが、オペアンプは 高入力インピーダンスで非常に扱いが難しいのです。極端な例では基板についた指紋などでも性能は変化してしまいます。基板の質でも特性は変わります。超高抵抗のテフロン端子で基板と絶縁するなどという手法さえ使われているくらいですから、接点が8個もあるというのは実は大問題なのです。
 しかしソケットで交換できるというのは大きな魅力ですね。なにしろアンプ自体を交換してしまうのですから、こんなおもしろいことはありません。アンプ異本対を交換するのには音が良いと言われているものではどんな安いアンプを買っても数万円はするでしょう。それがオペアンプ交換では同じことを1万円程度で交換可能になってしまうのです。本当に楽しいです(笑)
 オーディオケーブルと同じで「接点は無い方が良い、でも無いと不便」これを 解決するために開発したのがCOP−01なのです。もちろん音質も向上することをねらっています。
 こういう楽しみは一部の自作系マニアだけの物でした。しかし今は違います。是非、貴方も自作マニアの仲間になってみましょう。あとこれらの話には条件があります。今言った話は高忠実度再生と言うことから考えた話です。オーディオの楽しみはそれだけではなく、音を変えたり色つけを楽しんだりする場合もあります。この場合は少し異なり、歪みがあった方が迫力があるとか心地よいと言う形も聞く人が人間ですから否定できません。このような楽しみには少し別の考え方になりますが、これを言い出すと、設計技術者にとっては非常に難しい問題となり前に進むことが難しくなると思います。
 一番簡単な例が CDなどのマスタリング。全部加工です。加工して一般的な嗜好に合わせているわけです。加工ですから原音と異なりますよね。いわば歪みです。歪みを加えて音を良くしていると言うわけですが、納得できますか?これが納得できてしまったらオーディオはもっと簡単になりますが、まず無理かと思います。私ももう何十年も頑張っていますが、いまだに加工音が懐かしいときもありますし、自分がビデオなどのオリジナル音楽を製作をするときはやはり加工します。HIP-HOPなど加工しないと音楽になりませんから(汗)
 ただ、いろいろなところで 解説はしてきましたが、「制作者の音楽を聴きたければ、再生装置は無加工が前提」これだけは間違いのない事実だと思っています。確かにマスタリングの最終段階ではラジカセ等想定してテストはしますが、だからといってマスタリングエンジニアが何に合わせているか想像して、CD毎に機器を変えたりラジカセの音で満足しているオーディオマニアはいないと思いますので当たり前ですね ^^;
 中には音楽によって機器を変える人もいて、一つの楽しみかもしれませんが、気軽に音楽を聴くにはこれはちょっと問題だと思います。大変ですよね。
 今回はコバルトX-1000や改造を理解するために、オペアンプなど基本的なオーディオの世界を解説してみました。

テキスト:西出 晃


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